漬け汁に抗生物質が・・・?           東京農業大学教授  小泉 武夫

イラスト さて、今日のくさやの作り方は昔と大差ない。何百年と浸け継がれてきたくさや汁に、魚を漬けそれを日干しにする。  このくさや汁に、実に驚くべき成分の存在が明らかになった。新島は東京から150キロも離れた島であり、 昔は医療体制が十分とはいえなかった。 そんな時代島民は体に異常をきたすと薬の代わりに付け汁にまで頼ったという。 下痢だ、便秘だ、風邪だ、疲労だといっては付け汁を飲んだ。確かにこの汁には、原料の魚から流出したり、 発酵菌が生産したりしたビタミン類や必須アミノ酸類が豊富で、滋養成分のかたまりのようなものであるので 、皆がその効用を体験的に知ったのであろう。そして、何よりも重宝されていたのが外科の治療薬としての役割であった。 切り傷やはれもの、瘡(くさ)などにくさやの付け汁を付けるとほどなく治癒した。最近になって研究されたところ、 何とくさやの漬け汁には、天然の抗生物質が含まれていることが分かったのである。
くさやの発酵には何十種類という微生物が関与しているが、彼には自分たちの子孫だけを増やして、この快適な生きる場所を確保しようとする。それには他の発酵菌の増殖を押さえる必要があり、そこで相手を殺してしまう物質を生産する事になる。それが抗生物質である。しかもこの抗生物質はたんぱく質でできているので、人が口に入れても食べても、たちまちだ液や胃袋中のたんぱく分解酵素で分解されてしまうので、全く無害である。切り傷などの患部に塗ると、進入してきた化のう菌は、たちまちくさや菌の作った抗生物質に抑えられ繁殖できず、従って傷は治癒するというわけなのである。まさにミクロの世界の驚嘆そのものであり、これらの事実を奇跡と称しても大いに許されるであろう。
さて、今度は上手な焼き方。この焼き方でもおいしさが多き左右されるから厳重注意。火は必ず背側(皮の着いている方)から入れること。遠火の強火がよいが、焼きすぎるとアッという間にパサパサになってしまうので注意。表面がうっすらと焼き色が付いたところでひっくり返して身の側に火を入れて、ほんの30秒ぐらいで仕上げる。熱い内にむしって食うのが1等賞の味。余ってさめたものは、細切りにしてお茶漬けでうれしい。


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